惑星アブラクサス T.C.4667

ホアキン
ママ!ちょっとママってば!

シャロン
そんなに騒がない−−
一体どうしたの?

ホアキン
ママ!新しい合成犬だって!ロボットのやつと違って
本物そっくりなんだから−−

シャロン
無理無理。高すぎて、普通のおうちでは買えません。
もっと手頃な値段になってきたら考えてもいいけど。

ホアキン
ホント?いつごろ買えるようになる?

シャロン
ホアキンの背丈がママを越える頃かもね?

ホアキン
ちぇっ!

ホアキン
−−ねぇ、ママ?

シャロン
なぁに?

ホアキン
ネットでお試し版を体験したいなぁ−−ね、いいでしょ?

シャロン
U.M.N.の仮想体験は一日30分までよ。

ホアキン
やったぁ!ママ−−ありがとう!

シャロン
オンラインで変な人に会ったらすぐに通報して
ダイブアウトすること。いいわね?

ホアキン
よーしそれじゃあ種類はパピヨン。
生まれてから6ヶ月ぐらいのオスがいいかな。
ロケーションはお任せするよ。
30分だけ試してみたいんだけど−−

ネットワークオペレータ
承知しました。小型犬パピヨン。生後6ヶ月のオス。
ネクサス社製の合成犬に該当するものを確認いたしました。
ロケーションはアブラクサス中央公園にいたします。

ホアキン
OK!それじゃ、お願い!

unknown
−−
その鉢を大いなる河ユウフラテの上に傾けたれば、河の水涸れたり。
これ日の出ずる方より来る王たちの途を備へん為なり。

ホアキン
ん?誰かいるの?おかしいなあ。
誰かいたような気がしたけど−−そんなわけないよね。
今は僕しかログインしてないってステータス画面に書いてあるもん。
さっ!こっちへおいで!!

パピヨン
ワンワンッ!

 

Xenosaga Pied Piper
第一章
Sequence:1

 

エーリッヒ
ザウアー隊長、こちらへどうぞ。

ジャン
状況報告を頼む。

エーリッヒ
来期頭に星団連邦と移民船団の間で大規模な会談が予定されているのは
既にご存知かと思います。

ジャン
−−巡礼会議だな?

エーリッヒ
−−そうです。地元マスコミから得た情報では
ここアブラクサス、アルコーン特区の臨時代表を務めている
ドナルド・マーカンドが、昨今活動が活発になっている右翼組織を
裏で操っているのではないかという疑惑が浮かび上がったらしいのです。

ジャン
−−確かなのか?ドナルド・マーカンドはトーレ財団を票田に政界進出した男だ。
財団は難民救済や移民船団の受け入れなどクリーンな穏健派で通っている。
その子飼いがタカ派と手を組むのか?

エーリッヒ
はい。ゆえに、世論へのアピールも含めて親善大使団を編成し、
いささか茶番めいた親睦会の場を中立であるアルコーンに設けたわけです。
しかし、大使達は拘束された。

ジャン
世論へのデモンストレーションが最悪のショーになってしまった−−
というわけか。−−皮肉なものだな。
−−で、アルコーン警察の捜査状況は?

エーリッヒ
親善大使と外交官が拘束されているポイントは確定済です。
NG-PP6-42T8。アルコーン警察では移民船団の影響下にある
辺縁組織による犯行だと見ています。

ジャン
移民船団側からの公式見解は出ているか?

エーリッヒ
はい。本日22:00時に発表されたユリウス教皇の公式コメントでは
移民船団側は本事件には全くの無関係であるとの事です。
本事件においては移民船団も被害者であり、もし、星団連邦からの
嫌疑が晴れない場合は巡礼会議の中止もありうると−−
隊長の見解は?

ジャン
教皇ユリウスはアブラクサス〈ここ〉の分割統治案そもそもの提唱者でもある。
反教皇派である可能性は捨て切れんが−−
今回の事件で犯人から何らかの声明は出ているのか?

エーリッヒ
いいえ。

ジャン
−−だろうな。犯人の目的はドナルドを陥れるためでも
親善大使達に対する身代金の要求でもない。
連邦と移民船団の関係を悪化させることが目的だとしたら
すべては犯人の思惑通りに事が進んでいるというわけだ。

エーリッヒ
−−

ジャン
今回の会場プログラム構築はトーレ財団の関係組織によると聞いた。
当然、用意された対ハッキング・セキュリティーは最高レベルと見ていい。
そのAAAクラスの防壁を突破できるのは、我々公的機関か、あるいは−−

エーリッヒ
−−ヴォイジャー−−ですか?

ジャン
おそらくな。先の移民船団のミルチア宙域への
停泊調停の証書改ざん事件を覚えているか?

エーリッヒ
ええ−−確か、グロリアのチームが担当していた事件ですね?
まだ、捜査の具体的な手がかりは掴めていないと聞いていますが−−

ジャン
あの事件−−どうやら連邦側の極右組織『ネストリウスの末裔』が
ヴォイジャーの手を借りてハッキングを起こしたという話だ。
犯行の動機を考えると、今回の事件もネストリウスの末裔が
ヴォイジャーの手を借りていると思って間違いないだろう。

エーリッヒ
−−しかし、仮にネストリウスの末裔に手を貸しているとして
果たしてヴォイジャーにとって「うまみ」はあるのでしょうか?

ジャン
−−分からん。これまでにあった数々のヴォイジャーによるテロ行為。
そのいずれもが果たしてヴォイジャーにとって
「うまみ」のあるものなのかすら定かではないからな−−
これからダイブしてそれを探ってみる。ともあれ
用済みとなった外交官と親善大使達の身柄を最優先で保護せねばならん。
ダイブの準備は?

エーリッヒ
−−その事ですが−−

ジャン
−−なんだ?現状は包み隠さず報告しろ。

エーリッヒ
既にラクティス、メリスがアルコーン警察の署員を引き連れてダイブをしています。
現在ミハエルがトレースを行っていますが万が一の事態を考慮してバグスもつけました。
兵装はBT−278。対3種テロリストに設定しています。
順調に行けばターゲットを捕捉している頃ではないかと−−

ジャン
許可無しに?−−メリスの判断か?

エーリッヒ
はい。

ジャン
−−俺もログインする。すぐにデバイスの準備をしてくれ。


エリック
これはこれは。お待ちしておりました−−

ジャン
先行したラクティス達は?

ミハエル
あっ、隊長!

ジャン
メリス達の状況は?エーリッヒの話ではそろそろターゲットを捕捉している頃だが−−

ミハエル
いやぁこの会場のロジックを構築したやつですがね相当なやり手ですよ−−

エーリッヒ
−−

ジャン
難航しているのか?

ミハエル
ええこれを見てもらえますか?

ジャン
これは『カーネギー構築法』?

ミハエル
ご存知でしたか。

ジャン
ああ、名前だけは連警学校時代に聞いたことがあるが−−もう、10年ほど昔の話だ。

エーリッヒ
T.C.4400年代初頭に当時のヴェクターインダストリーのU.M.N.管理・運営部門−−
−−今は1局に統合されてしまったらしいがそこで体系付けられた
U.M.N.内に仮想空間を構築するための基礎理論。
カーネギーというのは当時、組織のリーダーを務めていた数学者の名前だと聞いている。
考案から数百年が経ち科学的に飛躍的な進歩があったはずの現在においても
彼の理論がなければ仮想空間の研究は100年以上遅れていたといわれている−−

ミハエル
さすがエーリッヒ。そう、その通り。
で、どんな凄腕のプログラマーでさえも仮想空間を構築する際はこの理論を
基にして作成しているんです。−−たとえオリジナルと称していたとしてもね。
今度はこちらを見てもらえますか?

ジャン
これは−−何だ?仮想空間の構築法のようだが−−

ミハエル
こっちが大使達が拘束されている仮想空間。今回我々が潜る所なんですがね。
使ってないんですよ。カーネギー構築法を−−−−一切ね。
全く独自のロジックで仮想空間が構築されている。
オマケにダイブしたところでそこに待っているのは何重にもかけられたセキュリティーと
侵入者駆逐用のマクロファージ。一体なんだって犯人はこんな厄介な場所を
ハッキングしようと思ったんですかね−−?

ジャン
−−

ミハエル
−−ともあれラクティス達を送り込むことは取りあえず成功しました。
まあ、地元警察のおかげで大使達が拘束されているポイントが
特定できたって事がせめてもの救いでしたね。何とかセキュリティーの
薄いポイントに潜ることができたみたいです。全くやれやれですよ。

ジャン
バグスが同行しているとはいえバックアップの到着を待たずに
斥候〈ポイントマン〉だけで潜るとは自殺志願者でもいるようだな。

ミハエル
す、すいません。メ、メリスのやつがせかすんでつ、つい−−

ジャン
後でメリスと一緒に始末書を書かせるから覚悟しておけ。
とにかく今は俺のダイブの準備が最優先だ。準備はできているのか?

ミハエル
は、はい−−とにかく安全なログイン先はいくつかピックアップしておきました。
メリス達のミッション進行度を計算すると
隊長は仮想空間中庭付近のポイントにダイブすれば
すぐにメリス達と合流できると思います。
ただ、安全といっても先ほども言ったとおり仮想空間の中はセキュリティーが
迷路のように組まれてます。プラスしてマクロファージがうようよしてるんで
油断は禁物ですね。

ジャン
了解した。

ミハエル
隊長が到着次第すぐに潜れるようダイブ準備は万全です。

ジャン
当然だ。すぐにダイブを実行する。

ミハエル
−−隊長?

ジャン
何だ?

ミハエル
実は−−一つだけ気がかりなことがあるんです。

ジャン
−−気がかり?

ミハエル
ええ、事件発生から現在までの大使達のトレース記録を洗ったんですが
大使達が抵抗した痕跡が全く見当たらないんです。

ジャン
どういう事だ?

ミハエル
通常何者かの外力によって仮想空間内に拘束された場合
被拘束者の脳電位パルスに、何らかの抵抗の痕跡が表れる筈なんです。
しかし今回はそれが一切ない。ありえる唯一の可能性は−−

ジャン
馬鹿な!?大使達が自らの意志で仮想空間内に留まっているとでも言うのか?

ミハエル
仮想空間の構築方法の差異から発生するトレース記録のエラーの線で
検索をかけたんですがなにも−−とにかく何処にも
拘束を匂わせる電位異常もそれを引き起こすプログラムも存在しないんですよ!

ジャン
どう思う?

エーリッヒ
わかりません。大使らに滞留する動機があるとは思えませんが。
強制ログアウトは試したのか?

ミハエル
それで解決出来るならとうにやってるさ。外部から強制的に
ログアウトさせようとすると対象の脳神経を傷つける恐れがあるんです。
安全に強制ログアウトを実行するには直接仮想空間に潜って
ターゲットに接触するしかありません。

ジャン
承知した。俺のダイブ記録もトレースを頼む。

ミハエル
気をつけてください。こんな妙な事件初めてだ。
−−何かいやな予感がします。

※2Fロビー

クリス
ここが特捜班の仮設本部になります。
まだ整理できてないので荷物が散乱してますけど−−

ビクトリア
一度仮想空間へ入ったら作戦が終了するまで戻ってくる事は
できませんから、気をつけてください。

ハースト
入手した武器や防具は装備しないと効果を発揮しませんので
きちんと装備してくださいね。

※仮設本部

スティーブ
セーブは、いつでも行えるのでこまめにセーブした方がいいですよ。

※1Fロビー

ステイシー
ここは星団連邦警察アルコーン支署です。
あっ、特捜班の方でしたか。ご活躍、期待しております。

ドウェイン
あれ?ジュースが出てこないぞ!?
『故障中』と書かれた張り紙が貼られている。

リサ
戦闘中にアイテムの【エスケープボール】か
エーテルの【グッバイ】を使うと逃走することができますよ。

ジェシー
この子、色々と知ってるのよねぇ−−私なんか
エーテルはレベルが上がると覚えていくってことくらいしか知らないわ。

※外に出ようとする

ジャン
今は、任務を最優先しなくては−−

※右の部屋

マッカラム
−−ご苦労。作戦目的は、親善大使達の救出だ。
ヴォイジャーの関与も考えられる−−ジャン、油断するなよ。

ジャン
−−部長、申し訳ありません。私の管理が行き届いていないばかりに
このような事態を招いてしまって−−

マッカラム
メリスの件か?そう気にするな。
まあ、私もかつては誰ぞの尻拭いをよくしたものだ−−

※左の部屋

ビンセント
特捜班だかなんだか知らねぇが偉そうにしやがって−−
だいたい、俺ら現場の叩き上げから言わせりゃあ−−

ジャン
−−

リック
あっ−−な、な、何か
ご、御用でありますか、そ、捜査官殿!

※2Fダイブ室

ビル
エーテルは、EP(エーテルポイント)を消費して使用するので
アイテムの【ローズジスト】等で細めにEPを回復した方がいいですよ。

エリック
ミハエルさんの指示でバックアップの体制は完璧です。ザウアー捜査官は
大船に乗った気持ちで仮想空間内でのミッションに専念してください!

エーリッヒ
一度、仮想空間へダイブすると作戦が終了するまで戻ってくる事はできません。
情報の収集などをされるようでしたら今のうちに済ませておいて下さい。
ご安心下さい。作戦の詳細は極秘にしております。
ただし、アルコーン警察の方もかなりの署員を動員している様なので
事件の概要は一般署員にも通達があった模様です。

※人のいるデバイスを調べる

ジャン
メリス達か全く無茶をする−−無事だといいんだが。

※人のいないデバイスを調べる
ダイビングデバイスだ。既に仮想空間へのダイブ準備が整っている。

ミハエル
あっ、隊長!ダイブの準備は完璧です!ログインしますか?

 

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